結論

蒸したら小分けし、
翌朝まで冷蔵する

芯まで蒸す→浅い容器へ→一晩冷蔵

この操作で、でんぷんの一部が消化されにくい形へ変わる可能性があります。

ただし、「冷やせば必ず血糖値が下がる」「太りにくくなる」までは言えません。さつまいもを使った小規模な人の試験では、冷却・再加熱による食後血糖の確かな差は確認されていないからです。

おなかの中

消化の「はさみ」が
入りにくいでんぷん

でんぷんは、たくさんのブドウ糖が鎖のようにつながったものです。普段は消化酵素という小さなはさみに切られ、ブドウ糖になって小腸から吸収されます。

ところが、はさみが入りにくいほど固くまとまったでんぷんもあります。

レジスタントスターチ

小腸で消化されにくく、大腸まで届くでんぷん。日本語では「難消化性でんぷん」といいます。

もともとはでんぷんですが、体内では食物繊維と同じように振る舞います。「食物繊維そのもの」と一言で片づけるより、食物繊維のように働く、消化されにくいでんぷんと考えると正確です。

冷蔵庫の中

ほどけた鎖が、
もう一度並び直す

蒸している間、水と熱がでんぷんの粒へ入り込みます。固く閉じていた構造がほどけ、消化されやすい状態になります。

冷えてくると、ほどけた鎖の一部が再び手を取り合い、きれいに並び直します。

でんぷんの老化

加熱でほどけたでんぷんが、冷えることで再びまとまる変化。腐るという意味ではありません。

温かいとき
鎖がほどける
冷えたあと
一部が固く並ぶ

炊きたてのごはんを冷蔵庫へ入れると、翌朝は少し硬くなる。あれと同じ仲間の変化です。

机に散らばった紙なら、はさみをどこからでも入れられる。何枚もそろえて固く束ねると、切りにくくなる。でんぷんも、並び方が詰まるほど消化のはさみが入りにくくなります。

研究を読む

「増える」と「健康になる」の間には、
まだ距離がある

測定された

0.93% → 1.89%

蒸した「なると金時」では増えた

100℃で12分蒸し、25℃で20分冷ました日本の研究です。ただし、生と蒸した後の比較であり、「蒸したて」と「一晩冷やしたもの」の比較ではありません。

研究室の条件

+62.1%

加熱と冷却を3回繰り返すと増えた

2009年の実験で確認された増加率です。研究室での繰り返し処理なので、家庭で一度蒸して冷やす場合へ、そのまま当てはめられません。

人で調べた

10人

食後血糖の確かな差は出なかった

ゆでたてと、4℃以下で24時間冷やして再加熱したものを比較。曲線に見た目の違いはありましたが、統計的な差は確認されませんでした。

かなり確か

冷却で、でんぷんが消化されにくい形へ並び直す仕組みはある

条件つき

蒸したさつまいもで、レジスタントスターチが増えた測定例がある

未確認

家庭で一晩冷やせば、誰でも血糖値や体重に明確な効果が出る

誤解しない

冷やしても、
糖質は消えない

糖質ゼロになる?ならない

さつまいもの大部分のでんぷんは、冷やした後も消化されます。消化されにくい形へ変わるのは一部です。大きな一本を食べれば、摂る糖質の総量も増えます。

高用量のレジスタントスターチを毎日摂る研究で見つかった効果を、冷やしたさつまいも一本へそのまま当てはめることもできません。

今日の食べ方

蒸して、一晩冷やす
さつまいも

夜に蒸して、
朝の一品へ。

材料

さつまいも
2本
水
適量

太さがそろったものなら、火の通る時間もそろいます。

  1. 01

    洗う

    皮を残してよく洗い、傷んだ部分があれば除く。

  2. 02

    蒸す

    湯を沸かした蒸し器へ重ねずに並べ、中火で25〜40分。中心へ竹串が抵抗なく通るまで。

  3. 03

    小分けする

    清潔なトングで取り出し、早く冷えるよう半分に切る。浅い清潔な容器へ重ねずに置く。

  4. 04

    冷蔵する

    蒸気が落ち着いたらふんわり覆い、調理後2時間以内に冷蔵庫へ。翌朝まで冷やす。

  5. 05

    食べる

    冷たいままでもよい。温めるなら、食べる分だけ中心まで温める。

翌朝

変えるのは、さつまいもではなく
段取りかもしれない

蒸したてのさつまいもは、もちろんおいしい。冷やしたさつまいもも、別の食べ物に変身するわけではありません。

ただ、夜のうちに蒸しておけば、翌朝は包丁も鍋もいらない。でんぷんの一部も、消化されにくい並び方へ変わる可能性があります。

健康は、一つの成分で決まりません。

それでも、明日の朝食を今夜のうちに用意する。その小さな段取りなら、続けられそうです。

参考資料

根拠と限界

  1. 池田倫子ほか「加熱方法の違いがさつまいもの食物繊維量と物理的性質に及ぼす影響」(2020)
  2. Yadav BS, et al. Studies on effect of multiple heating/cooling cycles...(2009)
  3. Foster-Brown C, Majumdar A. The effect of cooling and reheating sweet potato...(2019)
  4. Xiong K, et al. Effects of resistant starch on glycaemic control...(2021)
  5. 農林水産省「家庭で実践!食中毒予防策 食事編」
  6. 厚生労働省「家庭での食中毒予防」

この記事は、食品科学の研究を家庭向けに整理したものです。病気の診断や治療を目的としません。品種、蒸し方、冷却条件によってレジスタントスターチ量は変わります。